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行き止まりは、どこにもなかった

行き止まりは、どこにもなかった

新!コテ派な日々~第二十ニ話~(番外?Dead Data@第十ニ話)

「…ふむ。どうやら…引く気はない…という感じですか?それは。」


かてないさかなは、凄く不愉快そうに、面倒臭そうに…。

こちらをちらっと見て、大袈裟に肩を落とすアクションを見せる。

正直、まだ完全にこの先どういった戦いになるかは想像がついてない。

黒いコテ…死忘とは私が一度戦っているがその能力はまだ見ていない。

閃光騨の能力は知っているしそこまで脅威では無いがあの組み合わせの中ではどれほどか予測出来ない。

かてないさかなはそもそもこれまで出会っただけで逃げているから全く何も情報がない。

逃げないでいるつもりだったが、そう考えるとかなり分が悪いな…。


「あー、それではぁ!これより、ロドク軍隊、デッドデータ、白いコテ連合との戦闘を開始したいと思います!!礼!!」


…ふざけた調子で戦闘を仕切るかてないさかな。

だが、どうせそれも奴の演じる道化の姿。油断なく構えたまま我々はどちらも動かない。


「そうそう、以前、出会った際にちゃんと名乗れなかったので今一度…。
   私はかてないさかな。名前はともかくとして、まぁ結構強いのであしからず。さて、では…」

「勝負。」


小さく、かてないさかなが呟いた声が、戦いの開始の合図となった。

両者がそれぞれ一斉に動く。と言っても我々はただ、距離を取ろうと下がっただけだが。

能力が閃光騨以外に分かってない以上闇雲には突っ込めない。

なるべく遠くで、対応できる距離を保ちつつ攻撃する。

そう思って下がりながら私は銃を、彼女は水を撃ち出そうと構えていたが、何かにぶつかり、どちらも体勢を崩す。



「ははっ、下がらせるとでも思ってんのぉ!?」


見ればぶつかったのは真っ黒い触手。それがどこからともなくにょきにょき伸びてきて退路を断っていた。

…ただ下がる道を奪われた程度ならそう気にする事も無いが、周りを同じ様な触手で囲まれてしまっている。

これは逃げ道そのものを奪われたな。これが死忘の能力か。


 ホーミングフラッシュボム
「自動追尾閃光弾!」


続いてそこへ閃光騨の撃ち出した炎の弾がぶつかってくる。

しかし、名前の割に軌道が甘いなこの攻撃は。

精度の高い追尾性能を持った攻撃って訳じゃ無さそうだ。

何発か飛んで来たが、ギリギリで回避する事を意識すれば避けるのは容易い。

火の玉は全て我々の行く手を遮っていた黒い触手に当たって弾ける。

…だけで終わるなら良かったのだがな。

本番はここからだったらしい。炎の勢いは収まる事なく、触手へと広がっていた。

そうか、あの触手…一体なんだろうと思ったら正体は木の能力だ。

しかも…


「ほらほらぁ!!まだまだこっちはちょーっと能力見せただけだよー!!」


黒い触手は炎に巻かれたままにょきにょきと伸び、私達の方へと向かってくる。

相性で言えば木は火に弱い。だが、閃光騨の能力はそう強いものじゃない。

だから、相性で言えば弱くとも完全に焼き切る程の力はない。

それを敢えて利用し、炎の触手として使う事で合体技としているのだ。


「くっ!!!」


熱い、そして、触手の数が多い!!

捕まらない様移動するだけでもだいぶ体力が持って行かれる。

かと言って、アレに一度でも掴まればそれだけで相当なダメージを受ける事になる。

中々の連携だ。その上でもう一人…。


リミットオーバーウォーター
「違反速度の水。」


かてないさかなが居るのはかなり凶悪だ。

バシャリ、と水をあちこちに撒き散らしながらかてないさかなはその上を滑る様に移動している。

その速度は普通に走るよりもずっと早く、今にも追いつかれそうだ。

そこへ更に、突然私達の足が急に重くなる。足元を見ると、何時の間にか地面にぬかるみが出来、足を取られていた。


  ダーティ・ウォーター
「足を引っ張る水」

「くそ!!」


苦し紛れに私はかてないさかなに銃を向ける。

が、既にそこまで迫っていたかてないさかなはそれを軽々と蹴飛ばし、

いつの間にか握っていた二刀流の太刀を私達に振りかぶる。


  レインダンスマーチ
「暴風豪雨行進曲!」


激しい雨が我々の周囲を覆い、その風圧にかてないさかなの太刀が止まる。

そして雨に流されたのか、足元のぬかるみが消えたので再び我々は走り出す。

その振り返りざまに反撃も行う。



キャノン・レイン
「土砂降り大砲!!」


ドォンッ!!

彼女の降らせた大きな雨粒は、奴ら3人を飲み込む様に落下と同時に大きく弾ける。

その隙に私も彼女も何とか次の攻撃を仕掛けようと相手に向けて攻撃しようとするが、

既に相手は体勢を立て直していた。今の雨粒はあの黒い触手に全て防がれてしまっていたらしい。

しかし、辺りの触手の炎は全て消え、普通の触手に戻っていたので今の攻撃で状況は少しはマシになったと思える。


「…ふぅん。思ったよりやるねぇ?」

「糊塗霧がただ油断しただけ、とは…言えない位はありますかね?」

「ひがたりない?もっとひをつかう?」

「どっちでもいいよ」


お互いの攻防はそこまで高度な物だったとは言い難い。

とは言え、これだけでも私たちにはかなりハードルが高かった。

そもそも基礎体力が相手とは違いすぎるのだ。こちらは既に息が上がり気味なのに対し、

相手は全く息を切らしていない。あれだけ能力を使ったにも関わらず、だ。

このままの状態が続くのはマズイぞ…ってうぉぉ!?


「ふぬぬぬぬ!!」


ドルルルルルルルッ!!

いつの間に持っていたのか、そしてどこから出したのか。

彼女はサブマシンガンとかそういう名称で呼ばれる銃を構え、乱発する。

結構な弾数あった様だが、全部撃ち尽くした所で、その場にガシャ、と銃を投げ捨てて彼女は走り出した。

恐らく、煙の中にちらりと相手が見えたからだろう。私も同じように逃げ出す。



ファイアーウォールボム
「火炎防壁弾」

 シャドウ・ガーディアン
「陰ながら守る者」

 マイナス・ウォーター
「勢いを止める水」



それぞれがそれぞれの能力で防壁を生み出し、今の攻撃を完全に防ぎ切っていた…。

やはり、通常の銃火器では歯が立たない。ここは何とか能力を使わねば…

しかし、私は先程落としてしまった銃以外に持っていない。

彼女に声を掛け、新しく銃を貰おうとするが弾かれた。 

今のは一体…と目を向ければ、そこに突き刺さっているのは死忘の大鎌。


「おしまい?次、こっちからもう行っていいかなー?ね。」

「そもそも、今私達攻められてました?全然、こちらに攻撃が通ってませんけど…本気出してます?」

「よわいねぇ!よわいよわい!ザァコ!!」


くそ、言いたい放題言ってくれるな…。事実だから何も言い返せないが。

変な意地はらず一度逃げるべきだったか…。全く敵わない。最初の頃とおんなじだ。

違うとすれば、前よりも全力で戦った上で全く敵わなかった。その上、逃げ道も塞がれてるって所位だろう。

万事休す、か…?

いや、そんな訳にいくもんか!!

私は奴らの虚を突こうと突如走り出した。

その先にはさっき落とした私が持っていた銃。これを拾いさえすれば何とか反撃が…!

しかし、私の伸ばした手は銃に届く事は無かった。

後頭部からの衝撃にその場に叩き付けられ、私の手は空を切る。


「いやいや、こちとら高速移動が出来る技を持ってるんですよー。さっきお見せしましたよね?
 それでねー、そんなモタモタと手加減して走られるとですね?そりゃぁ邪魔したくなるってもんでしょう?」


ニコニコとしながら、かてないさかなは私の目の前でライフルを踏み、へし折る。


「さ、これでもう使えませんね。さてここで突然の問題でーす。」

「何故、最初からこうしなかったでしょーかっ。はい、時間切れ。簡単ですよ?」

「“まだ何とかなる”と足掻いて足掻いて…その上でぜーんぶ無駄になって絶望するあなた方…
   そんな面白い見世物を見る為にわーざと私が用意した演出でしたー!御覧の皆様、答えられたかなー?」


く、そ…!こいつら…!自分が優位だからってどこまでも人を舐めやがって…!!

何とかふらふらと立ち上がり、奴らを睨みつける。

そういう作戦なのか、今みたいに遊んでいるのか、かてないさかなは敢えて死忘の方へと戻っていく。背を見せながら。

しかし、そこへ攻撃する手段は無い。あるとしたら彼女だが…同じ水の能力では分が悪いか。

ダメだ、何も浮かばない。どうやればここを切り抜けられる?どう奴らを倒せばいい?

まさかこれほどに差があるとは。いや、分かってた筈だろう。私も彼女も、真正面から戦った事はこれまで無いんだ。

最初から、分かっていたんだ。勝てないと。なのに、私は…。

ダメだ、どうする。ここで終わらせる訳にはいかない。なのに、なのに何で何も出来ない。

私は、託された筈だった。なのに、何故…。


「…絶体絶命…だね。どうしよっか?」



小さく溜息を吐いた彼女が、私の肩を掴んで引き寄せる。

…なんだ、一体どうしたと言うんだ?様子がおかしいぞ。

ふと見ると、彼女の手には何かが握られている。それは…あの時の手榴弾だ。


「まだ使える筈。でもこれ一個しかないんだ」


そう言うと彼女はそれをしっかりと握り込み、腹に抱えて走り出した。

…自爆する気だ!!


「おい!!」


呼び止めようと叫ぶ。だが、彼女は一心不乱に走っており、引き返す気配は微塵もない。

そんな決死の特攻ですら、奴らは呆れ気味に見ている。


「はぁ。そんなんで僕らがやられると思ってるのかなぁーあ。」

「さぁてねぇ。ま、あれ奪って来て下さいよ。その方が面白いでしょうから」

「うるさい、君に命令されるのは癪だからやめて。僕は僕の意思で最初からそのつもりでいるし。必要ないから」

「あー、はいはい。」


大した事でもない、と言いたげに奴らは言い争ったり呑気にしている。

それにこれまでを考えても本当に奴らに爆風が届くとは思えない。もしそのまま自爆したら完全な犬死だ。


「やめろ!!無意味だ!戻れー!!!」

「いまのうちならにげれるかもしれないよ」

「!?」


何時の間にか私の傍に居た閃光騨が、無表情でぼそりと呟く。

…待て、まさか、そういう事か?

打つ手がない。私がそう思っている事を察して…

せめて、私だけでも逃がそうと隙を作る為に、

無意味だろうと自爆する、という手段で相手の目を引いている…!?

何でだ!私は何も出来なかったんだぞ!そんな私を生かして、その後でどうなるっていうんだ。

何故そこまで信頼したんだ?どれだけ一緒に死線をくぐり抜けようとも…お互い何者かもよく分からない同士じゃないか!!


「うぁ、あぁああー!!!!」


恐怖を振り払うように叫び声を上げ、突進する彼女。



「ふふふ。幾らイレギュラーでも、流石に真っ二つになったら死ぬよね?」


余裕で向かってくる死忘。そしてその手には先程投げた筈の大鎌。

二人が重なり、どちらかが死ぬ…そう思った瞬間、二人の腹部を何かが貫いた。


「!?」

「は…?」


訳が分からない、と言った顔で二人はその場に倒れ込む。

実際、見ていた私も何が起こったか分からなかった。なんだ?何故だ?

二人が倒れ込む時、その背後に見えたのは、かてないさかなの姿。

それも、普段とは違う冷たい無表情で、手をかざす用に構えた状態で立っている彼の姿だった。

…その瞬間理解した。

二人を貫いたのは水。勢い良く撃ち出された水は弾丸のように二人を打ち抜いた。

そして、それを放ったのは…かてないさかなだ。


「いや、倒すまでが長すぎますから。待ちくたびれますよ?観客が。全く。分かってないなぁ」


困ったような顔をして、喋りながら彼女へと近づくかてないさかな。

わざとらしく溜息を吐きながらひょい、と彼女を片手で持ち上げると、ぬいぐるみでも渡すかの様に軽く投げて寄越してきた。


「こういう最期の瞬間ってのは大事ですよ。遺言とかあるかも知れない。漫画みたいに。
  自分たちに酔ってる様な勘違いで我々に挑んだあなた方にはお似合いでしょうから、しっかり聞いてあげて下さい?」

「お前…!!」


最早何に怒ればいいのか分からない位腹立たしいかてないさかな。

だが、弱々しく呻く彼女の方にすぐ視線を移す。今はそんな場合じゃない。それよりも彼女だ!


「お、おい!しっかりしろ!君には回復能力があるだろ!」

「あは…ここまで深い傷は…無理だよ…」


ゴホッ、と血を吐き出す彼女。

その血で身体が染まっていく様に私は言葉も出ない。

…いや、身体が染まっているのは、血のせいじゃない…。白い体色が、オレンジ色に変わっていく。

…まさか、これは…!?


「…“お前”…その姿は…」

「…わか…んないけど…あは、ほんとあるんだぁ…死ぬ寸前に記憶戻るってやつ…都合いいなー…」


自分の状況が皮肉だ、と言わんばかりに彼女は力なく微笑む。

やっと見れた彼女の本来の顔。それが何故、こんな時なんだ…。


「…ね、もう痛み感じないんだ。こういうのって、アレだよね。死亡フラグ…」

「やめろ!!もう喋んな!!なぁ!“俺”守れって言われたんだよ…!なのにお前…」

「…今まであのウィルスにすら負けなかったのにね…。怪我で一発かぁ…。情けない…」


悔しそうな表情をする彼女。

それが突然、力を振り絞る様に、ゆっくりと腕を上げたかと思うと、

ぐ、っと私の首に手を回して力強く引いた。


「っ、何を…!」

「聞いて…私、ね…本当にこの街が好き…。だから、例え自分が何者でも…守ろうと思うんだ」

「…君も、同じ気持ちで居てくれる、よね…“激撃激”」

「…!!当たり前だろ、“ユキ”!!」

「なら、守って…。そして…」


小さく、“ユキ”は俺に聞こえる程度の声で、呟いた。

ロドクを助けて、と。

…優しい奴だな、お前は。こうなった原因すら助けてーってーのか。

お前を守れなかった俺に、街だけでも、ロドクだけでも救えってか。すげー無茶言うなお前。

けどさ、お前のその姿見て、その名前で呼ばれて俺は全部思い出した。

俺がなんだったか、俺がどういうコテか、俺がこれから…どうすべきなのか…!!!

スゥ…と、ユキは言いたい事を言い終えると静かに目を閉じた。

その身体から力が抜けて行くのを感じる。俺の首に回っていた手も、ゆっくりと解け、その場に落ちた。

もう、心臓は動いていない。息もしてない。ユキは…今、死んだ。

俺はゆっくりと立ち上がり、ゲラゲラ笑っているかてないさかなを睨みつける。

奴の行動の意味は全く分からねぇ。何が面白いのかも俺には全く分からねぇ。


「いやー、まーさか本当に三文芝居をしてくれるとは!余りにつまらなすぎて逆に笑えますよ!すごいすごい!
  もしおんなじ立場でも、私じゃそんな、泣けも怒りも出来ないです!いやー、大した役者さんだぁ!あっはっはっは!!」


分からねぇ分からねぇ分からねぇ!!

これまで、何で全く思い出せなかったのか!

何でああもごっちゃごちゃごっちゃごちゃ余計な事を考えていたのか!!

“俺”は本来そういうの向いてねぇ!頭空っぽで、分かる事だけ分かってりゃいい!!

瞬間、俺の体色が一瞬で黄色に変わった。

それを見て、かてないさかなの顔色も変わる。

そうだ、お前はやっちゃいけない事をした。ここからずっと俺のターンだ。

カッと目を見開くと同時に身体の半分にだけ縞模様が入る。

そうそう、これこれ。俺って確かこんなだったよ。もう大体思い出したわ、あー、思い出した。


「…まさか、白いコテが変化するとはね…よく見れば、そちらも変化してますね?…ん?その姿…ユキ…?」

「あぁー、そうそう!そいつはユキだ!」

「…ガラッと雰囲気が変わりましたねぇ。それが本来の貴方ですか…。はて、それにしても…ユキを知る貴方は一体?」

「知らねぇか!まぁいいかどうでも!お前も俺も、シンプルに1つ分かりゃいい!!」


俺はスタスタと歩いていき、先程奴に折られた銃…“俺の銃”を拾い上げる。

あーあー、水浸しの上にボロボロになっちまってよぉ。ま、関係ねぇけどさ。


「…変身して随分と横柄になりましたが、状況、何も変わってませんよね?そんなゴミを拾ってどうしようと?」

「こうするだけの話だろ!」


それだけ言うと俺は俺の“力”で銃を火で包み込む。


「…えっ!?」


そう、俺の本来の能力はすっげーシンプル。どんな銃でも俺専用に改造して使うってーだけの代物だ。

火に囲まれた銃は、一瞬でその形を変える。ごちゃごちゃしたのは好かねぇ!

弾を打ち出す砲身と、弾を詰める部分だけがありゃぁそれでいい。

後は周りに炎があれば、なんかカッコイイだろ。

そんな邪魔なもんを取っ払った専用の俺の銃が炎の中から姿を現す。

これで、準備は整った。


「さかなぁああ!!!」

「…大声で無くとも聞こえますが、なんでしょうか。」

「お前は俺を怒らせた!!んで、何考えてんだかしらねーけどよ、とりあえずお前、ムカつく!!!」

「だからぶっ飛ばぁああああす!!以上だ!!そっちからはなんかあるかぁ!?」


俺の突然の宣言に面食らった様な表情でかてないさかなは一時固まる。

だが、すぐに何時も通りの表情に戻って、俺の宣言に倣う様に返した。


「私の計画は目障りなロドクとその他コテを全滅させ、自由になる事ですよ!!!」

「その為に邪魔者は始末した…それだけの話!」

「あなた方を泳がせたのも全て計画の内!ですがここまで邪魔になるのは計算外、よって排除します!!」

「以上。では…改めて死んで貰います!!」

「やぁーーっってみろこんの糞ボケツギハギィイイイイイイ!!!」


俺の左手に装着された専用銃をかてないさかなの方へと向ける!

だが奴は全くの余裕顔だ。まぁそうだろうな!そんなもん俺だって予想通りさ!!


「アナタは相当知性が低いらしい!!私の力がなんだったかお忘れですか!?」

「ぉお、パッとしねぇからわぁすれたぁー!!なんだっけなぁ!?
   まぁ、すぐ分かるか!身をもって!って事で教えてくれよ!!お前の身体でなぁ!!」


俺の大好きな派手な音と共に、専用銃が巨大な火の玉を吐き出し、かてないさかなの方へと飛んでいく。

細かい狙いなんか関係ねぇ!!でっけぇ弾だしゃどこでも当たるだろ!あとすげー早けりゃ避けられねぇ!そんだけだ!

まーしかし、腹立つな!かてないさかなの野郎はニコニコニコニコしながら水の防壁を張ってる。

アレで防げると思ってるらしいってのが本当腹立つよ!いやー、本当腹立つ。腹たちすぎて面白ぇ!!


「…っ!?馬鹿な!!」


ジュゥウウウウウウウ!!!

凄まじい蒸発音!これまた派手で俺のテンションを上げてくれる。

そう、俺の弾は奴の防壁なんざ物ともしなかった!一瞬で奴の防壁は消え、火の玉は尚も奴に迫る!そして…


「ぐ、ぎゃぁあああああ!!」


命中!!

当然奴は跡形も無く燃やし尽くされ…お陀仏と…なったのでした。チーン。ナムアミダブツナムアミダブー。成仏しろよぉ。

ま、とりあえずハッキリしたな。


「馬鹿はどうやらお前だったらしいな!はっはぁ!!」


上機嫌で俺は続いて閃光騨の方へと歩み寄っていく。

こいつにはなんだかんだ結構梃子摺らされてるからなぁ~。いい加減、倒さないといかん!!

これまで、目の前で起こった事の殆どについていけてなかったらしい奴は、唖然としてこっちを見ていたが

ある程度近づいた俺を見て、突如ハッとして倒れている死忘の方へと駆け寄り、激しく揺さぶった。


「オイオイオイオイ…あんま仏さんに無茶させるもんじゃねぇぜぇ?坊やよう!…おぉ!?」


っと、なんと死忘がむくりと起き上がりやがった。

アイツ、あの一撃で死んでなかったのか。なんつーしぶとい奴!!くそ、ユキは逝っちまったってのにずるいぞ!!


「ちょっと何!?揺さぶらないでよ気持ち悪い!てかかてないさかなマジお前ふざけんなよ!!
  そりゃぁ、僕らは身体の大部分ウィルスだし、頭ヤラれなきゃ平気だけど突然あんな事されたらびっくり…えぁ?」


あー、なるほどねぇ。結構お前ら面倒臭い構造してんな。説明どうもどうも。

感謝を込めて敬礼!!してる場合じゃねぇな。コイツも倒さないと悪いしな。

んで、悪いねーこっちだけ状況わかってて。そっち全く掴めてない感じだけども。説明する気もないんだわ。


「え、えっと…せんちゃん?かてないさかなどこ行った?んで、アイツ何、誰?」

「あ、アイツはさっきたたかってたやつ…なんかきゅーにつよくなったの…さかなはやられちゃった…」

「はっ、え!?かてないさかながやられた!?てか、強くなった…って、え、能力何?」

「ひ!」

「うえぇえ、やばい、すげーやばい。」


と言いつつも死忘はさっと立ち上がると、大鎌を構えて跳んだ。

そして、黒い触手を地面から生やしてそこに飛び乗ると一気にこっちに突っ込んでくる。


「先に殺せばいいだけの話でしょ!この速さに追いつける!?」

「おー、はえーはえー、追いつかねーかも。じゃ、そっちから来てくれるの待つわぁ」


言うが早いか、俺は自分の真下に向かって炎の玉を撃ち出した。

一瞬で俺の周囲が爆炎で包まれ、突っ込んできてた死忘も当然その火に飛び込む事になる。


「うああああ!?な、何考えてんだアイツあっちぃ!!うわっちゃっちゃっちゃぁあ!!」

「なーに、なんも考えてねーよ。ま、俺の能力だし、俺に火は効かねーからそらこうするよ、面倒だもん」

「なっ、え、おま…」

「いつ後ろに?てか?さぁねぇ。気付いたら居たわ。俺ジェットエンジン付いちゃってるから仕方ねーよな、うん!
 で、さぁ。…以前は世話になったなぁオイ…。人の命をオモチャみてーにする奴にゃぁ、ちょっとあっついお仕置きだ」


即座に俺はゼロ距離で火の玉を撃ち出してやった。

一瞬で奴もまた消し炭となり消え去る。うーん、本当はじわじわ痛めつけて地獄の罰のつもりだったが強すぎた。

まぁ、いいだろ。どうせ倒さなきゃならんかったしな。

さーて、と。残るは一人だなー…。

今の一瞬で二人も目の前で死んだのを目の当たりにしたからか、ガタガタ震える閃光騨。

早速銃を向け、溜めに入る。


「ぼ、ぼくもひのちからだから!し、しなないよ!むだだよ!」

「うーん。悪いねぇ、こっちが悪役みたいな感じになっちまうよ。けどまぁ、お前らも散々やった事だろうしな。
    命乞いとかそう言うの、受け付けてねーんだわ。大人しく死んでくれよな。まぁ、これもアレだよ。天罰?」


奴の能力は火。だが、その力は強くない。その時点で分かってた事だが容赦なく俺は最大に近い火力で撃ち込む。

一瞬で火に焼かれ、消し飛んだ。こうして、この場には俺が放った火と、その爆撃跡だけが残る結果になったわけさ。

…。


少々、口調を敢えて前の記憶が無い方に戻させて貰う。

やっぱり、テンション上げすぎて暴れるのは良くない。気づけば辺りはズタボロだ。

それに、どういう理由であれ、一方的に相手を痛めつける…その上命を奪うのは全く気分がいいものではなかった。

だが、それをせずには居られなかった。奴らは、彼女を…。ユキを殺したのだから。

敵討ちは済んだ。が、それを理由に今の事を正当化するつもりは無い。過去の事もだ。

俺は、コテを殺した。どんな理由であれそれは許される事じゃない。それでも


「俺は、やんよ。ユキ。1つ約束既に破っちまったんだ。もう一つ位は守んなきゃな。」


誰にともなく呟いて、俺はユキを抱え上げる。

そして、もう誰も居ないだろう隠れ家へと向かう。

こんな場所にずっと転がしておくのも嫌だし、適当に埋めるのもなんか嫌だ。

ユキには少しの間、あの部屋のベッドで待っていて貰う。

そして、全てが終わったなら…。

…その時は、本当のお別れをするかな。



それに、そうそう。まだ俺は隠れ家でやらなきゃならん事がある。

記憶を取り戻す、力を手に入れる、味方になる!全部やったからな。



つづく。


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